2017年01月26日

上田新会長でどうなるNHK?

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 NHKの新会長に元NHK経営委員の上田良一氏(67)=写真=が就任しました。お騒がせ発言が多かった籾井勝人前会長の後、どんな舵取りをするのか注目されています。NHKは就職先としても人気ですが、マスコミ志望ではない人にとっても身近なメディアです。一緒に考えてください。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「上田NHK始動/『公共放送として不偏不党貫く』/籾井氏との違い鮮明/会長就任会見/ネットとの融合意欲」です。総合面(2面)の「ひと・NHKの会長に就任した上田良一さん(67)」も関連記事です。(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

「不偏不党」って?

 上田氏は25日の就任記者会見で「公共放送として自主自律、不偏不党という立場を貫く」「事実に基づき、できる限り多くの角度から報道していきたい」と強調しました。
 「不偏不党」は広辞苑によると「いずれの主義・党派などにもくみしないこと。公平・中正の立場をとること」です。放送法にも「不偏不党、真実及び自律を保障する」と規定されており、報道機関としては当然のことのように思えますが、どうしてあえて強調したのでしょうか。

 籾井前会長は3年前の就任会見で「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と述べたほか、任期中にたびたび政権寄りの発言をして物議を醸しました。今月19日の任期中最後の会見でも、政治との関係を問われ「NHKはある程度政治との癒着関係ではないですが、その辺も一つ二つあるわけですよ。それが本当にNHKのためになることであれば、やぶさかではないと言えるんじゃないですか」と語りました。

「公共放送」とは?

 NHKは、中国中央テレビなど国家が管理運営する「国営放送」ではなく、「公共放送」です。公共放送は、営利を目的とせず視聴者からの受信料を主な財源として運営されます。英国のBBCなどが代表的で、ときには政府に批判的な報道もしなければなりません。籾井前会長は、この公共放送の報道機関としての基本的立場を否定しかねないような発言をしたため大きな問題になり、国会でも取り上げられました。籾井会長時代にはほかにも、番組の過剰演出問題、職員のタクシー券不正利用、子会社社員の着服・詐欺事件などが相次いだこともあり、再任はされず上田氏が選ばれました。

 公共放送のあり方については「マスコミ志望者必見!NHK会長発言で考える『公共放送』」(2014年1月29日)、「『公共メディア』NHKはどこへ?」(2015年1月23日)で、不偏不党については「総務相がテレビ電波停止に言及…『不偏不党』『公平』ってなんだ?」(2016年2月9日)を読んでみてください。
(写真は、東京・渋谷のNHK放送センター)

会長は「三井物産」から「三菱商事」に交代

 上田氏は、米国三菱商事社長や三菱商事副社長を経て、2013年からNHK経営委員会の委員を務めていました。籾井氏も三井物産副社長だったので、2代続けて総合商社出身者が会長に就きます。経営委は、NHK会長や理事らの仕事ぶりを監督し、NHKの予算や事業計画など重要事項を決める最高意志決定機関。NHK執行部を監督する経営委員から、監督される立場の会長に就くのは異例のことです。

 NHKの監査委員も務め、課題や問題点を熟知している上田氏は、籾井会長時代に問題視された政治との距離について疑念を払拭しようとしているようです。NHKには、受信料見直し、4K・8Kの実用放送開始、テレビ番組のインターネットへの同時配信など放送と通信の融合など課題は山積みです。上田新会長の舵取りに注目してください。同時配信については「テレビ番組、ネットに同時配信…背景・狙い・課題は?」(2016年10月19日今日の朝刊)で書きました。

「これでいいのかNHKの番組」論争も

 朝日新聞の読者投稿欄「声・どう思いますか」のコーナーでは、「NHK総合テレビは、民放と見まがうばかりの番組が多い」「耐えられないのは番組宣伝の乱発」「知性と教養を大事にしてほしい」との投稿をきっかけに、番組内容をめぐって熱い議論が起きています。こちらも下の入り口から読んでみてください(朝デジ有料会員のみ)。

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