2017年01月12日

日産、デンソー、ソニー…自動運転で競争・協業の時代へ

テーマ:経済

ニュースのポイント

 自動運転車をめぐり、自動車、電機、部品といった異業種のメーカーが協業したり、競争したりするケースが増えています。ドライバーが運転操作をしない「完全自動運転」に向けて、車のIT化や人工知能(AI)の導入が進んでいるためです。車はいまや電子部品の固まり。ソニーやパナソニックといった電機大手も自動運転車に照準を合わせはじめました。世界をリードする自動車、電機業界の最新事情を押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「車部品×電機 競争激化/自動運転向けIT化、垣根低く/協業進める会社も」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、CESのパナソニックのブース。完全な自動運転車に求められる車内空間を試作展示した)

家電見本市に自動車ずらり

 米国のラスベガスで、毎年恒例の家電・技術見本市「CES(セス:Consumer Electronics Show)」が1月上旬に開かれました。家電の最新技術のビジネスショーですが、今年は自動車メーカーや自動車部品メーカーの出展が増えて様変わりしました。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの日系自動車大手3社が初めてそろい、カルロス・ゴーン日産社長が日本の自動車メーカートップとして初めて基調講演(写真)。米航空宇宙局(NASA)と協力すると発表し「自動運転はより安全で、より信頼性の高いものになる」とアピールしました。CESについては、業界研究ニュース「酉年、世界最大級の家電市CESにパナソニックがタマゴ型ロボ」でも紹介しています。

異業種タッグ続々

 自動運転の実現に向けて、異業種間の協業や連携が目立つようになってきました。この間の朝日新聞のCESに関する記事からピックアップします。
◆日産-NASA(完全自動運転車の事故を遠隔操作で防ぐ技術開発)
◆日産-ディー・エヌ・エー(DeNA)(国家戦略特区で完全自動運転の技術開発)
◆ホンダ-ソフトバンク(ドライバーの感情を読み取って話しかけたり、寄り道を提案したりするAI技術開発)
◆ホンダ-米グーグル(完全自動運転の共同開発)
◆トヨタ-米配車大手ウーバー・テクノロジーズ(完全自動運転によるライドシェアめざす)
◆デンソー-東芝(AI技術開発)
◆デンソー-NEC(車載ソフト開発、セキュリティー対策)
(写真は、ホンダがCESで披露した試作の自動運転車)

電機メーカーに追い風

 今日の記事では、日本の電機メーカーや部品メーカーが自動運転で攻勢をかけている様子が紹介されています。モーター世界最大手の日本電産、三菱電機、アルプス電気が、運転を支援するモーターやセンサー、ディスプレー、車載用の通信機などを展示しました。

 運転支援やその延長線上にある自動運転では、車と車、車と信号機が通信する機器が必要で、周辺状況を正確にとらえるカメラやセンサーが欠かせません。車載センサー市場だけでも、矢野経済研究所の試算では、2020年には2015年の3.3倍の約1兆4500億円に達しますから、電機メーカーにとっては追い風です。

ソニー、パナも自動運転車ねらう

 昨日の経済面には、ソニーの平井一夫社長(写真)とパナソニックの津賀一宏社長のインタビューが載りました。平井氏は自動運転技術が進化すれば、ビジネスは部品供給にとどまらないとみて「車内での時間の使い方が変わる」「車内空間を一つの商品とみて、ソニーがどう取り組むのか社内で議論している」と語りました。いずれ、ソニーが得意とするエンターテインメントを車内で思う存分楽しめる車ができるかもしれませんね。

 パナソニックは、CESで家電より自動車関連に大きなスペースを割き、フロントガラスに速度計などを表示する「ヘッドアップディスプレー」や電子ミラーなどを展示しました。同社は事業の中心を家電などの消費者向け(BtoC)から企業向け(BtoB)製品に移してきました。津賀社長は「我々が(消費者向けに)先祖返りすることはない」と話しています。

 自動運転をめぐって、自動車、自動車部品、電機、電機部品のメーカーが入り乱れて開発を競う時代です。この数年で、各業界の勢力図が塗り変わるほどの大きな変化が起きるかもしれませんよ。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別