2017年01月10日

「シェアエコ」って何? 新ビジネスの可能性に注目

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「シェアリングエコノミー(シェアエコ)」という言葉をよく聞くようになりました。個人間でモノやサービスをやり取りするビジネスで、欧米を中心に広まり、日本でも注目されています。個人と個人の取引ですが、仲介するビジネスも拡大しています。影響を受ける業界もあり、就活生も知っておかないといけない新たな潮流です。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(4面)「シェアの時代⑦ みんなで解決 行政も後押し/ソウル市『宣言』、駐車場所を提供」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。元日からの連載の最終回。これまでの連載記事から、シェアエコについてまとめます。

2025年の市場規模、22倍に?

 シェアリングは「共有」することですね。モノを買って所有するのではなく、必要なときに借りたり、他人と共有したりすればいいという考え方が広まっています。そのほうが安く使えるし、無駄に持ち続けることもありません。そこで、車や家、服などのモノや場所、サービスなどを、多くの人と共有して貸し借りしたり、個人間の貸し借りを仲介したりする仕組みが生まれ、シェアエコと呼ばれています。モノやサービスが安く利用できるようになるため、格差を是正する効果があるとも言われています。

 米国のコンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパースの試算では、シェアエコの世界市場規模は2013年の150億ドル(約1.7兆円)から、2025年には約22倍の3350億ドル(約39兆円)に拡大するそうです。国内市場については矢野経済研究所が2015年度の285億円から、2020年度に600億円になると推計しています。

五輪に向けて増える「民泊」

 シェアエコの代表格が、民家に泊まる「民泊(みんぱく)」と、素人が自家用車で客を運ぶ「ライドシェア(相乗り)」です。

 民泊では、個人宅の空き部屋を紹介する民泊サイトの米Airbnb(エアビーアンドビー)が世界中で普及しています。日本でも都市部を中心に広がり、2016年1~10月にエアビーに泊まった訪日客は300万人超で、2015年1年間の2倍超に急増しました。訪日外国人の1割以上が利用したことになります。

 旅館業法では無許可の一般の民家が繰り返しお金をとって客を泊めることは禁じられていて、現在の民泊の多くは違法営業とみられています。ホテルや旅行業界は反発していますが、政府は東京や大阪など一部地域を特区にして民泊を認めてきました。東京五輪・パラリンピックに向けて国内のホテル不足は確実です。政府は今後、営業日数制限などの新しいルールを設けて民泊を明確に位置づける方向で、さらに広がるとみられています。

「ライドシェア」にトヨタは…

 ライドシェアでは、米ウーバー・テクノロジーズの自家用車を利用した配車サービスが有名です。2009年に創業したウーバーのサービスは70カ国、400都市以上(ライドシェア以外のサービス地域も含む)にのぼります。ニューヨークや上海ではスマホで呼んだ他人の自家用車で移動するのが当たり前になっています。ただ、日本では市民がマイカーで有料の配車サービスを行うことは「白タク行為」として禁じられています。日本はタクシーの料金が明瞭でサービスの質も高いとされているため、国土交通省は規制緩和には慎重姿勢です。

 それでも、トヨタ自動車の米子会社がウーバーに出資しました。ライドシェアが広まればマイカーの売り上げは落ちるでしょうが、そんな時代に備え、車両リースなどで囲い込む考えとも言われています。

子育てサービスも

 シェアエコの対象はモノだけではありません。連載では以下の例を紹介しました。
◆着物の貸し借り仲介
◆高圧洗浄機、電動工具、デジタルカメラなどモノの貸し借り仲介
◆イベント向けの場所の貸し借り仲介
◆駐車場の貸し借り仲介
◆子ども服の交換サービス
◆ベビーシッターの仲介システム
◆友人や近所同士のグループ内で子どもの送り迎えや一時預かりを支援するサービス
◆訪日客とガイドを仲介
◆専門知識を持つ個人に話を聞けるサービス提供

 子育てや介護といった分野でも広がりそうですね。昨年、業界団体の「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」も発足しました。サイトには会員企業や関連イベントの情報が紹介されています。参考にしてください。

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