2016年12月07日

カジノ法案成立へ…君は賛成?反対?考えよう

テーマ:政治

ニュースのポイント

 「カジノ解禁法案」が衆院を通過し、今国会で成立する見通しになりました。推進派は「観光立国」に向けた経済効果を強調しますが、ギャンブル依存症の増加や治安の悪化などを心配する声が強く、賛否が大きく分かれています。経済成長と安心・安全についてどう考えるか。こうした話題のテーマについては、賛否とその理由を語れるようにしておきましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは以下の記事です。
・1面「カジノ法案 衆院通過/民進など退席/公明自主投票」
・総合面(3面)「カジノ 異論入り乱れ/公明は幹事長ら11人反対」
・同(4面)の「カジノ推進派 経済前面/審議5時間半 野党3党は退席」
・社会面(39面)「カジノ『人の不幸前提』/反対派、参院否決求め声明」
(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

どんな法案?

 カジノについてはなんとなく知っていると思いますが、ルーレットやトランプ、スロットマシンなどで賭け事ができる賭博場のことです。米国の観光都市ラスベガスが有名ですね。カジノ解禁法案は、日本では刑法の賭博(とばく)罪で禁じられているカジノを解禁し、ホテル、国際会議場などからなる統合型リゾート(IR=Integrated Resort)の整備を政府に促す議員立法です。法律が施行されると、政府は1年以内をめどに必要な法律などを整えることになります。安倍首相は「観光振興、雇用創出の効果は非常に大きい」と、成長戦略の目玉として取り組む姿勢です。
(写真は、カジノなどが入るシンガポールの人気施設「マリーナ・ベイ・サンズ」 )

大阪、横浜などが熱心に誘致

 IRの誘致には、外国人観光客を呼び込もうと、北海道の釧路市や留寿都村、横浜市、千葉県、大阪市、長崎県などが名乗りを上げています。横浜市はカジノへの年間来訪者を国内567万人、海外142万人、売上高850億円と試算し、IRの経済効果を4114億円と見込みます。大阪府も2025年に開催をめざす国際博覧会(万博)とのセットでの相乗効果を狙い、早期成立を強く働きかけてきました。関西経済同友会は、大阪にIRができた場合の経済効果を年7596億円とはじき、松井一郎府知事は「IRで6万から7万人の雇用が生まれる」と期待しています。

賛成論、反対論は?

 主な賛成論と反対・慎重論をざっとまとめます。
【賛成】
・雇用創出、観光客増加、地域振興
・ほとんどの先進国でカジノは解禁されている
【反対・慎重】
・ギャンブル依存症の増加
・不正な資金洗浄(マネーロンダリング)に使われる心配、暴力団や外国人犯罪組織などの関与
・地域の風俗環境や治安の悪化、青少年への悪影響
・中国のマカオ、韓国、シンガポール、ベトナムと、アジアではカジノが増えて競争が激しくなっており経済効果にも疑問

 賛成派は経済効果を重視し、反対・慎重派は社会への影響を心配しているわけですね。

衆院での審議はたった5時間半

 与党の自民、公明両党、野党の民進党の中でも賛否が分かれています。朝日新聞が2014年に実施した世論調査では、法案への「反対」が59%で「賛成」の30%を上回りました。

 これだけ賛否が分かれる法案なのに、衆院での審議は2日間でわずか5時間半という短さでした。なぜ急いだのか。来年の通常国会に法案審議を先送りすれば、天皇陛下の退位を可能とする法案の審議が始まりカジノ解禁法案どころではなくなる可能性や、衆院解散で廃案になるリスクがあるからです。

 衆院内閣委員会では、カジノへの入場規制や患者の相談体制といったギャンブル依存症対策の整備、カジノ事業者への厳格な規制ができる体制づくりなどを求め、IRを開ける区域の数を法律で限定することを盛り込んだ付帯決議がされました。推進派も依存症対策などの大切さは認めています。

 最後に、社会面に載っている反対派弁護士の言葉を紹介します。
「ギャンブルで自殺する人もいる。人の不幸を前提に成長戦略を描くのは愚かなことだ」(新里宏二弁護士)

 みなさんも一人ひとり、考えてみてください。

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