2016年10月13日

大規模停電!「インフラはあって当たり前」と思わない企業研究を

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東京都内で大規模な停電があり、交通機関などが混乱しました。電気や水道、交通といったインフラは、毎日当たり前に利用しているため、普段はその存在を深く考えることはあまりないと思います。でも、供給が止まったりトラブルが起きたりすると暮らしへの影響は甚大で、ときには命にも関わりかねません。就活では「当たり前」から脱することが必要です。これを機に、利用者としての「消費者目線」ではなく、企業側の「ビジネス目線」でインフラの意義やトラブル対応について考えてみてください。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面トップの「東京 大規模停電/一時58万戸 霞が関や鉄道も/埼玉で送電線火災 東電」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。総合面(2面)の「時時刻刻・首都停電 弱み露呈」、社会面(39面)の「白昼停電 都心ドキリ」も関連記事です。

できても、ほめられない仕事

 停電が起きたのは12日午後。都心部を含む約58万6000戸が一時停電し、東京地裁や国土交通省、文部科学省など霞が関の中央省庁も含まれていました。1時間ほどで復旧しましたが、西武鉄道の大半の路線で運転を見合わせるなど、多くの人に影響しました。東京電力によると、埼玉県新座市の地下に設置された電力ケーブルの漏電から火災が起きたのが原因とみられ、新座変電所から都心への送電がストップ。停電は国家の中枢にまで及びました。交通の混乱に巻き込まれた人もいるでしょう。東電の責任は重大です。原因をしっかり調べて、二度と起きないように対策を講じてもらわなければなりません。

 「日本の大動脈」を担うと自負するJR東海の採用担当者は、鉄道というインフラ事業について「人事のホンネ」で、「できてほめられることは決してないが、できなかったときに周りにかなりの影響を与えてしまう事業」と表現しました。

 一方で、当たり前のものが使えなくなると、その存在に改めて気づき、ありがたみを感じたりもするものです。インフラに関わる会社や仕事について考えてみましょう。
(写真は、黒煙を上げる新座市の東電の施設)

そもろもインフラって?

 インフラはインフラストラクチャー(infrastructure)の略で、広辞苑には「産業や社会生活の基盤となる施設。道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤の社会資本、および学校・病院・公園・社会福祉施設等の生活関連の社会資本など」とあります。

 インフラ関連の企業といえば、電力会社、ガス会社、上下水道関連の業界、電機では重電メーカー、道路や橋、港湾を造るゼネコンなど建設会社、鉄道会社、通信会社……あたりが代表的です。どこまでがインフラなのかは時代によって変わりますし、人によって判断も異なるでしょうが、わかりやすく言えば「ないと基本的な暮らしに困るもの」です。

 一方で、インフラ以外の業界・仕事は「あれば暮らしがより便利になったり、豊かになったり、楽しくなったりするが、なくても生きていけるもの」といったところでしょうか。
(写真は、停電で消えた信号機=東京・池袋)

社会貢献度を感じられる

 機械・プラントエンジニアリングのIHIの採用担当者は「人事のホンネ」でこう言っています。
 「インフラ系の事業が多いので、製品が完成したとき、納品したときに『社会に貢献した』というやりがいを感じます。お客様が喜んでいるところも見られますが、逆に私は若いころ、結果が直接目に見えないとも感じていました。食品などのメーカーだと、ある新商品を開発してすぐにマーケットに出して、結果次第では半年で製造中止という世界がある。一方、我々はプランニングに半年、1年かけ、そこから受注して完成まで3~4年は平気でかかるプロジェクトばかりなので、すぐに結果が出ない。若い人はそういう悩みを持つと思います。ただ大きいので、完成したときには社会貢献度をすごく感じられますね」

 社会基盤を担うインフラ業界か、暮らしをより便利にする業界か。自分がどちらにより魅力を感じるか、向いているかを考えてみてください。インフラ志望者は、インフラを「あって当たり前」のものと片付けないこと。そもそもの存在意義、基盤整備の苦労や工夫、新たな技術による展開、不測の事態への対応など、「ビジネス目線」で深く考える業界研究が必要です。
(写真は、運転見合わせとなった西武池袋線の池袋駅で運転再開を待つ人たち)

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別