2016年10月05日

「君の名は。」「シン・ゴジラ」見た?大ヒット作は見逃すな

テーマ:文化

ニュースのポイント

 大ヒットアニメ映画「君の名は。」を観ましたか? 興業収入130億円を突破し、日本のアニメでは宮崎駿監督の作品以外では初めての100億円超えを記録。歴代の邦画で6位になりました。今夏は「シン・ゴジラ」も大きな話題になりました。こうした大ヒット作は、多くの人が観ていますから、OB・OG訪問などで話に出るかもしれません。エンタメ業界や旅行業界への影響についても考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、文化・文芸面(34面)の「『君の名は。』旋風 なぜ/興業収入130億円 若者らに爆発的ヒット/ツイート数突出『共有したくなる』/音・映像シンクロ はまるライブ感」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、「君の名は。」の新海誠監督)

どんな映画?

 山奥の田舎町に住む女子高校生と東京都心で暮らす男子高校生の心が入れ替わる物語で、すれ違う恋の切なさや千年ぶりに地球に接近する彗星(すいせい)によって動かされる運命を描いています。

 10~20代の若者を中心に観客数が落ちず、年齢層も広がっています。記事には「物語とか曲とかいくつもポイントがあって、SNSで共有したくなる気持ちがわかった」(19歳男性)との声が紹介されています。朝日新聞が公開から1カ月間の映画のタイトルを含むツイート数を調べたところ、グラフのように、「シン・ゴジラ」「アナと雪の女王」といった話題作と比べても突出しています。

 私も、若者で満席の映画館で観ました。身近な日常や心情の描写から壮大なストーリー展開にいたる構成、映像の美しさなど、心に残る一級のエンタメ作品だと思いました。加えて、シン・ゴジラと同様に、東日本大震災と原発事故の経験があったからこそ生まれた作品だけに、現実の社会やこれからの日本のことを多面的に考えさせられました。

エンタメ志望者はヒットの要因考えよう

 当初の興業収入目標は20億円でしたから、配給した東宝はホクホクです。2016年8月中間決算もシン・ゴジラのヒットで業績予想を上方修正しています。ジブリ作品も東宝配給ですし、昨年ヒットした細田守監督の「バケモノの子」も同社。東宝はドル箱を一つ増やしました。

 エンタメ業界志望者は、「君の名は。」大ヒットの理由について考えてみましょう。記事では徳間書店のアニメ専門誌「アニメ-ジュ」編集部の鈴木雅展さんが「音と映像が合致する気持ちよさ」を挙げています。人気ロックバンドRADWIMPSが脚本段階から参加し、監督と綿密なやり取りを重ねて劇中音楽とボーカル曲を作ったといいます。

 「音楽市場でライブが強くなったように、いまの若い人は『体験』にお金を使いたい。『君の名は。』のクライマックスは生理的快感を与えてくれ、ライブのような体験的要素があった。映画館という場で、感動をもう一度味わいたい、誰かと共有したい、という思いがリピーターや口コミを生んでいる」との分析です。「ライブ感」が時代のキーワードのようです。

大ヒットは時代を映す社会現象

 エンタメに限らずどの業界でも、企業は「世の中にアンテナを張っている人」を求めています。世の中の関心、トレンドを知らずに良い商品、サービスは提供できないからです。これだけヒットすると一種の社会現象ですから、できれば観ておくことをお勧めします。

 一方で、テレビ、新聞、出版、広告といったマスコミ業界の志望者は、ぜひ観ておいてください。社会現象に無関心では、これらの仕事は務まりません。ただし、周りの学生も、みなさんに対応する社員も多くが観ているでしょうから、「最近観た印象的な映画は?」と聞かれて、この映画について語ったら、「ありきたり」と思われるリスクもあるので注意が必要です。「人事のホンネ」で、電通の採用担当者はこう言っています。

 「他の学生のとは毛色が違う、人と違って目立っているのは結構大事なことで、面談で『最近好きなCMは?』と聞くと、平気で『ソフトバンクの白い犬』とか答える学生が結構多い。広告会社を受けるならもう少し変わったこと、他の人と違うこと言えないの?と思いますね。その答えに君自身の個性やヒトとは違うユニークな視点はないのかと」

旅行業界は「聖地巡礼」に商機

 アニメのヒットは、旅行、観光関連の業界をめざす人にも関係がありそうです。アニメファンが作品のモデル地を巡る「聖地巡礼」がブームになっているからです。

 「君の名は。」の舞台のモデルになった岐阜県飛驒市を訪れる人が急増しています。主人公の三葉(みつは)が住む糸守町は架空の町ですが、新海監督は「飛驒市をイメージした」と話しており、8月末の公開後、あっという間に「聖地」になりました。飛驒市は観光用のホームページで「『君の名は。』を探す旅!」として聖地を紹介しています。
(写真は、「聖地」のひとつ飛驒市図書館。入り口に写真撮影の「お願い」が掲示されている )

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