2016年07月15日

スタバが変えた喫茶店文化 社会変えるビジネス目指せ(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:社会

ニュースのポイント

 スターバックスコーヒーが日本に進出して今年で20年になります。大学生にとっては、物心ついたときには存在していたわけですから、スタバが社会を変えたと言われてもピンとこないと思います。でも、古い人間は、スタバの上陸で日本の喫茶店文化が大きく変わったことを実感せざるを得ません。それまでなかったものを世に送り出し、社会や文化を変えることこそ、ビジネスの醍醐味です。志は大きく、そんなビジネスをつくりだすという気概をもって就活に臨んではどうでしょうか。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「スタバ20年 日本の『喫茶』変えた/カフェ人気先導・個人店は減少」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

スタバの成長はここ30年

(日本1号店で最初に売れたという「ダブルトールラテ」を手にするスターバックスコーヒージャパンの水口貴文CEO=写真)

 スターバックスコーヒーは、1971年にアメリカ西海岸のシアトルで誕生しました。1985年にエスプレッソを中心にして、テイクアウトや歩き飲みもできるようなスタイルにしたところ、シアトルスタイルと呼ばれて人気になりました。全米に展開するようになり、世界にも乗り出しました。日本の第1号店は1996年8月2日に東京・銀座にオープン。以来、日本でも人気となり、今年3月末現在で1178店にまで増えています。スタバのスタイルが人気を呼ぶと、日本でも、ドトールの「エクセルシオールカフェ」やタリーズなど似たスタイルのカフェチェーンが続々と誕生しました。

喫茶店のイメージ変える

(4月にオープンした奈良県のスターバックスコーヒー北生駒ならやま大通り店=写真)

 スタバが新しかったのは、喫茶店のイメージを変えたことです。それまでの日本の喫茶店は、少し暗めの店内で、タバコを吸いながら暇つぶしのおしゃべりをするイメージでした。もちろん、コーヒー自慢の店もありましたし、ジャズ喫茶のように1人で音の世界に身をゆだねるとか、小腹を満たすために軽食を食べるとか、いろいろな目的の店がありました。ただ、多くはおしゃべりの場として機能していたと思います。男の子が街でナンパするときの決まり文句が「ねえねえ、お茶しない?」だったのは、あちこちに喫茶店があったことと、おしゃべりといえば喫茶店というイメージが強かったためだと思います。
 一方でスタバは、店内が全面禁煙です。おしゃれな外観で店内のデザインも落ち着いています。おしゃべりの場というよりは、1人でたっぷりの量のコーヒーを飲みながら、ホッと一息つくイメージです。それまでの喫茶店に入りにくかったおひとりさまの女性もスタバなら抵抗なく入ることができました。

喫茶店はピークから半分以下に

(当時でも珍しくなっていた、コーヒーをサイフォンで入れる喫茶店=1968年、東京・新宿)

 実は、旧来型の喫茶店はスタバが上陸する前から減っていました。総務省の統計によると、喫茶店数が最も多かったのは1982年で全国に16万余もありました。それがスタバ上陸の96年には10万余にまで減っていました。喫茶店でおしゃべりしながら時間をつぶすという喫茶店文化自体が、忙しい社会の中で衰えていったわけです。スタバ上陸は、そうした時代の流れを加速させたと言えます。2014年には、スタバなどの新しいスタイルのカフェを含めても日本の喫茶店は約7万店にまで減りました。

天才でなくても生み出せる変化

 面白いのは、最近、旧来型の喫茶店とスタバの中間的な形の喫茶店チェーンが伸びていることです。今年証券市場に上場したコメダ珈琲(写真)などが代表格です。統一されたデザインの店舗で、コーヒーへのこだわりや軽食の充実が売りです。店内には自由に読める新聞や雑誌がたくさん置かれ、時間つぶしや小腹を満たしたりするにはうってつけのスタイル。一方、テイクアウトにも対応しています。これもスタバの刺激が生んだ旧来型喫茶店の進化だと思います。新しいスタイルが新しい文化を生み出し、その文化が旧来型文化と化学反応を起こしてまた新しいスタイルを作る。そんな変化は、天才でなくても生み出せると思います。センスとアイデアとほんの少しの運があれば、あなたにもできるかもしれません。

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