2016年06月02日

消費増税先送り これを読めば面接で語れる!

テーマ:政治

ニュースのポイント

 安倍首相が2017年4月に予定していた消費税率の10%への引き上げを再び延期することを表明しました。政策の大きな転換など、賛否両論が飛び交うテーマは面接などで意見を聞かれることもあります。整理して話せるように準備しておきましょう。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、1面トップの「再延期『参院選で信を問う』/首相、消費増税19年10月表明/『世界経済リスク』『公約違反受け止め』」のほか、各面で展開している関連記事です。
 記事の内容は――安倍晋三首相は1日、国会会期末を受けて首相官邸で記者会見し、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半再延期することを正式に表明した。首相は消費増税の再延期を判断した理由について、当初から延期するケースとして挙げていたリーマン・ショック級の事態は発生していないとする一方、「新興国や途上国の経済が落ち込んでおり、世界経済が大きなリスクに直面している」と説明。「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と位置づけ、7月10日投開票の参院選で「国民に信を問いたい」と訴えた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 消費税は何かを買うたびにかかる税金ですから、日々の暮らしを考えれば、安いに越したことはありません。消費増税はもともと国民にとっては不人気な政策ですが、それでも増税しなければいけない理由がありました。だからこそ、消費増税を政争の具、つまり、政治的な駆け引きや、国民への点数稼ぎに使わないと、2012年、当時政権党だった旧民主党と野党だった自民党、公明党とが約束したのです。それが消費税率10%への引き上げと社会保障の一体改革を盛り込んだ「3党合意」です。
 「増税しません」という政権が国民に「歓迎」されるのは当たり前ですが、そうやって先送りしていると、国の財政も社会保障制度も、破綻(はたん)という最悪の結末に近づきます。

 消費増税の流れについておさらいです。長く5%だった消費税は2014年4月に8%に上がりました。法律では2015年10月に10%に上げることが決まっていましたが、政府が経済情勢を見極めて最終判断するという「景気条項」が盛り込まれていて、それを根拠に、政府は2014年11月に税率引き上げの延期を決めました。その際、安倍首相は、リーマン・ショック級の事態がない限りは、「再び延期することはない」と明言しました。政権の都合で先送りできる「景気条項」も消費増税法から削除しました。なのになぜ先送りできるのか。そのための法案を臨時国会に新しく提出する考えです。再延期には「公約にも法律にも違反している」との批判も出ています。

 なぜ消費税を上げることになったのか、については「どうして増税するの?基礎から学ぶ消費税」(2013年10月2日「今日の朝刊」)を読んでください。

 消費増税を先送りすることには、景気悪化や国内消費のさらなる落ち込みを避けるといったメリットがある一方で、財政再建が遠のき、増税による税収増を財源にした社会保障制度の維持や充実が難しくなるというデメリットもあります。国債を中心とする国の借金の総額は1000兆円を超え、国内総生産(GDP)の約2倍。先進国の中でも突出して悪い数字です。しかも、高齢化による社会保障費は、これからも年に数兆円単位で増え続けます。増税後に予定していた低所得者層への給付金や保育所の受け皿を増やす待機児童対策も、別の財源を確保しなくてはできません。影響は国内だけにはとどまりません。財政健全化に疑いを持たれれば、大量に発行されている日本の国債へ信頼度が揺らぎ、格付けが下がったり、価格が暴落したりすることも考えられます。
 3面の「消費増税再延期 私はこう見る」で、慶大教授(財政学)の土居丈朗さんは「二度あることは三度あると思われ、国際社会からは、財政運営にコミットできない国だとみなされてしまう」と話しています。
 
 だれかとの大事な約束を守れないとき、「約束を破ってごめん」ではなく、「これまでの約束とは異なる新しい判断だ」と言い訳をする。国民にとってもっとも大きなデメリットは、政権の言うことがころころ変わって、何を信じていいのかわからなくなり、さらなる政治不信が増したことかもしれません。

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