2016年05月17日

決算発表ピーク 円安・原油安で明暗

テーマ:経済

ニュースのポイント

 大手銀行の決算が出そろうなど、2016年3月期決算の発表が相次いでいます。昨日の「ニュース★あらもーど」でも書きましたが、決算は各企業の経営状況や取り組みの最新情報です。今日は、これまでに発表された決算記事からトピックスをまとめます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「大手銀、2年連続減益/3月期合計/海外事業に陰り」です。
 記事の内容は――大手銀行7グループの2016年3月期決算が出そろった。最終的なもうけを示す純利益の合計は前年比5.5%減の2兆7242億円で2年連続の減益。日本銀行の大規模緩和や競争激化による金利低下で、国内の貸し出しから得られる収益が減っている。好調だった海外事業にも陰りが見え始めている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 決算は、企業が一定期間の経営成績や財政状態をまとめて、いくらお金を使って、いくらもうけたか、財産の状況はどうなっているのかを明らかにする手続きのことです。法律で1年に1回は行うことになっていて、4月から翌年3月を会計年度とする「3月期決算」の企業が多いため、この時期に発表が集中します。

 14日の朝刊経済面には「売上高・営業益 最高に/東証1部 3月期決算ピーク/原油安など追い風」という記事が載りました。SMBC日興証券が12日時点で、東京証券取引所1部に上場する企業の決算内容を集計し、未発表企業については公表済みの業績見通しなどで推計した内容です。全体の傾向としては、昨年まで続いた円安で輸出企業の採算が改善し、原油安がコスト削減につながり、売上高は前年より1.0%多い491兆9560億円、営業利益は10.5%増の33兆5550億円で、いずれも過去最高を更新する見込みです。自動車や空運、電気・ガス業がとくに好調でした。以下、これまでに発表された中から代表的な業界の決算ニュースをピックアップします。

【好決算の業界】
◆大手電力10社(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄)
原油安で火力発電の燃料費が大幅に減り、東日本大震災後初めて全社が経常黒字に。10社の燃料費は前年より38%減。沖縄をのぞく9社は原発停止で火力発電に頼る割合が高まり、燃料費低下が収益改善に貢献した。東北、中部は最高益。震災後、7社が料金を値上げしており、電気代値下げを求める声が高まりそうだ。
◆自動車(トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダ、富士重工業、スズキ、三菱自動車、ダイハツ工業)ホンダとダイハツを除く6社が営業増益。純損益はトヨタ、日産、富士重、スズキが過去最高の黒字で、8社の黒字の合計は前年より3.6%伸びた。ただ、年明けから進む円高で2017年3月期は業績の悪化が見込まれ、業績予想を公表した6社中5社が営業減益を予想した。
◆大手ゼネコン(大林組、鹿島、清水建設、大成建設)純利益が1990年前後のバブル期を上回り、4社とも過去最高に。競技場、ホテル建て替え、道路などのインフラ再整備等、東京五輪関連工事のほか、オフィス需要も高まり高層ビルも次々建つ。ただ、国内の建設市場全体では、主要97社の工事受注額合計はバブル期の6割ほど。巨大プロジェクトは技術力のある大手の独壇場で、需要は東京の都心部に限られる(以上、5月14日朝刊)。
◆大手不動産(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産HD、野村不動産HD)いずれも純利益が前年より1~2割増え、三井、住友、野村の3社は最高益を更新。東京都心部などの大型オフィスビルの賃貸が好調で、2008年のリーマン・ショック直前以来の活況。2017年3月期も4社が増収増益を見込む。
◆携帯大手(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ)3社とも売上高と営業利益が前年を上回った。米アップルのスマホ「iPhone」の新機種「6S」と「SE」発売に加え、家庭のインターネット回線とのセット販売が新規契約を押し上げた。一方、総務省が2月に「実質0円」などの大幅な端末の値引き販売見直しを求める方針を打ち出した後は端末の販売が落ち込んでいる。

【厳しい決算となった業界】
◆大手商社(伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商、三井物産、三菱商事=純損益順)
各社とも資源価格低迷のあおりで、海外に保有する資産価値の見直しなどを進めたことから損失が拡大。三菱、三井、豊田の3社は純損益が赤字に転落した。
◆石油元売り大手(JXHD、出光興産、コスモエネルギーHD)原油安で在庫や海外権益の価値が下がり、各社とも2年連続の赤字。原油安に伴ってガソリンの卸値も下がり、そろって減収。元売り各社は石油備蓄法で70日分の在庫を持つよう義務づけられており、巨額の評価損が出た。

 円安と原油安、資源安で明暗がくっきり分かれましたね。決算から世界の経済情勢も見えてきます。これから発表される業界・企業にも注目してください。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別