2016年03月25日

「組織の三菱、人の三井」だけじゃない!5大商社の強みと個性を把握しよう(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:経済

ニュースのポイント

 昨日に続いて商社のニュースを取り上げます。昨日は、就職人気で花形の商社にも逆風が吹いており、業界には栄枯盛衰があることを指摘しました。今日は、もう少し深掘りして、各商社の社風や強み弱みを書こうと思います。資源価格の暴落で三井物産に続いて三菱商事も大きな赤字になりました。一方、伊藤忠商事は過去最高の利益を計上する予定です。何が違ってこうなったのでしょうか。

 今日取り上げるのは、1面の「資源安 商社1、2位赤字/三菱1500億円、三井700億円/3月期予想/依存を抑制 伊藤忠は最高益」です。
 記事の内容は――世界的な資源安が、日本の大手商社の業績を揺るがせている。最大手の三菱商事は24日、2016年3月期に資源関連で計4100億円の損失が出て、純損益が1500億円の赤字になりそうだと発表した。2位の三井物産も初の赤字になる見通し。
 三菱商事は戦後の財閥解体を経て1954年に現体制になってから、初の赤字だ。2016年3月期の純損益について、2015年11月期時点では3千億円の黒字と予想していた。だが、最近の銅価格の低迷で、2011年に投資したチリの銅鉱山事業の収益の見通しが悪化。オーストラリアの液化天然ガス(LNG)の開発計画の見直しなども重なり、損失が膨らんだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 長く隆盛を誇った総合商社が、資源安をきっかけに「冬の時代」に入りました。でも、すべての商社がいっせいに「冬の時代」に入ったわけではありません。三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5大商社に限っても、濃淡はかなりあります。

 今回、大きな赤字を出すのは、三菱、三井で、ともに資源を得意分野にしている財閥系商社です。三菱は、坂本龍馬が作った海援隊の流れをくみ、同じ土佐の出身の岩崎弥太郎が受け継いで発展させた商社です。三菱重工業、日本郵船と並んで三菱グループの源流3社のひとつです。戦前からアジアの資源は手がけていましたが、今の資源・エネルギーの強さは戦後に築いたものです。中でも象徴的なのが、ブルネイのLNG事業です。1970年に調印する時、社長の手が震えたというほどの巨額を投じたプロジェクト。その後のオイルショックなどを経て、カネのなる木になりました。「LNGプロジェクトを決めた先人に足を向けて寝られない」といまだにいわれる成功例です。

 三井物産も資源・エネルギーが柱の会社です。三井の場合、有名なのは不運なほうの事業です。イランに巨大な石油精製工場を造ろうとしたIJPC事業です。工事の途中の1979年、イラン革命が起こり、紆余曲折の末、工事は中止になりました。三井は撤退し、1000億円を超す損失がでました。でも、三井は資源から手を引くことはありませんでした。それからもサハリンでのLNG事業などの大型事業を成功させ、もうけの8割以上を資源で稼ぐ会社になったのです。

 三菱と三井は社風も違います。「組織の三菱、人の三井」という言葉がそれを表しています。三菱が組織で動くというのは、社長の任期を見ても分かります。1人6年が不文律で、急死したケースを除けばそれが守られています。「社員の子弟は入社できない」という不文律もあります。いずれもワンマン経営者や閨閥ができないようにして組織を守るためです。

 三井物産も組織力はありますが、個人を大事にしようという発想が強くあります。3年ほど前、採用の責任者だった磯崎憲一郎・人事開発室長のインタビューをしたことがあります。磯崎室長は、芥川賞を受賞した作家でもあります。磯崎室長の存在自体が「人の三井」を表しているのですが、その磯崎室長が「個性のある人がほしい」と言っていました。そうした採用の方針は社風も形作りますので、印象として三井のほうが三菱よりくだけた人が多い感じがするのもうなずけます。

 伊藤忠商事は、もともと大阪系の繊維商社と言われた商社です。資源よりも繊維、アパレルに強いのが特徴です。地域としては、中国で圧倒的に強いのが特徴です。伊藤忠の元社長の丹羽宇一郎氏が民間人ではじめて中国大使に起用されたのは、その強さも買われたものと思われます。社員は、「三菱、三井なにするものぞ」という気概を持っている人が多く、バイタリティがあるのが特徴だと思います。

 丸紅は実は伊藤忠と同根の会社です。幕末に伊藤忠兵衛という人が作った会社が、大正時代に、伊藤忠と丸紅に分かれました。これで分かるように、丸紅も繊維に強いのですが、それ以上に穀物などの食糧や発電、紙パルプなどを得意にしています。1970年代に日本を騒がせた疑獄であるロッキード事件の贈賄側となって大きく傷ついたため、その後は社会との摩擦に気を遣い、堅実な社風に変わってきたようです。

 住友は、三菱、三井と並ぶ3大財閥ですが、住友商事は三菱、三井とは商社としての歴史や社風が随分違います。住友は、戦前、住友家の方針として商社を持ちませんでした。ですから、住友商事は5大商社の中で唯一戦後の設立の会社です。しかも、住友系の不動産管理などの会社に商社部門を作ってスタートしましたので、今もビルなどの不動産をたくさん持っています。このため、他の商社ほどアグレッシブに海外を動き回るということはないようです。だから社風は、「おっとりしている」とか「官僚的」とか言われることがあります。

 私はかつて経済記者として商社業界を担当したことがあります。担当する前は、商社とひとくくりに考えていたのですが、実際に各社に足を運ぶと中身は様々なんだと痛感しました。業界全体を見ることも大事ですが、そこで終わりにせず、個々の会社を見ると、業界全体の将来性とは少し違った将来性も見えてくると思います。

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