2016年01月29日

「残業の多い会社」に3パターンあり 解決策は?(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:社会

ニュースのポイント

 ドン・キホーテと同社の執行役員らが東京労働局から東京地検に書類送検されました。従業員に3カ月で415時間もの残業をさせており、労働基準法違反の疑いがあるためです。3カ月で415時間といえば、1カ月で平均138時間残業したことになります。20日働いたとすると、1日7時間の残業です。午後6時終業だとすると、毎日午前1時まで働いたことになります。体をこわすレベルだと思います。日本の会社は残業が多いことで有名で、残業代が出ない「サービス残業」という言葉まであります。残業の多い会社は、「残業をする社員を評価する」会社です。「残業をする社員は評価しない」とする会社が増えなければ、変わらないでしょう。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「ドンキ違法残業の疑い/書類送検 3カ月で最長415時間」です。
 記事の内容は――従業員に3カ月で最長約415時間の残業をさせたとして、東京労働局は28日、ディスカウント店運営のドン・キホーテ(東京、写真は大阪の店舗)と同社の執行役員ら8人を労働基準法違反の疑いで東京地検に書類送検し、発表した。発表によると、同社は都内のドン・キホーテ町屋店で2014年10~12月、20代の男性社員1人に労使で定めた残業の限度(3カ月120時間)を上回る415時間45分の残業をさせた疑いがある。また町田駅前や荻窪駅前など、都内の他の4点でも違法な残業をさせた疑いがあるという。複数の関係者によるとドン・キホーテでは人手不足で交代要員がいなかったり、複数店を回る上司の到着を待って部下の帰りが遅れたりしたという。一定日数分の出退勤の時刻を手書きでまとめて記入した痕跡があった店もあったという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 残業には三つくらいのパターンがあります。一つは、ドン・キホーテのような小売業によくあるケースで、人手不足にもかかわらず店に人を張りつけなければならず、1人の労働時間を長くして対応するケース。もう一つは、顧客と決めた納期に間に合わせるため長時間働くケース。IT企業などによく見られます。三つ目は、残業するほうが上司に評価されるとか上司や同僚が帰らないので帰りにくいとか考えてズルズルと会社にいるケース。金融機関や中央官庁など、堅い業界に多いように思います。

 1つ目と2つ目の解決策は簡単です。人を増やすことです。決められた残業時間の上限内で仕事が終わるように人を採用して配置すればいいだけです。こんな簡単なことが実現しないのは、もちろんコストがかかるから。人手不足の中で、人を雇うには給与を上げないといけません。IT企業のように、高い専門スキルが必要な会社ではなおさらです。人を増やしたはいいが、その後仕事が減れば、雇った人はヒマになるかもしれません。それなら1人に懸命にこなしてもらうほうが、安上がりと考えてしまうのです。

 本当に根の深いのは、三つ目のケースです。社風とか企業文化といったものと密接にかかわっているからです。終業時間が来ると「失礼します」と帰る若手を苦々しげに見送るベテランという図はよくあります。評判が悪いことに気づいた若手はベテランが帰るまで会社で仕事を続けることになります。残業代をまるまる請求しないサービス残業もこうした風土から生まれると思います。

 わたしがかつて取材した大手商社のモーレツ部長さんは、「日本のホワイトカラーは生産性が低い」が持論で、深夜までの残業は当たり前だと公言していました。さらに驚いたのは、自分の部に所属する者は、会社の近くに住まないといけないと言っていることでした。最終電車がなくなってもタクシーで帰宅できる体制がとれないといけないという理由からでした。この部長さんは特殊な例でしょうが、「残業は当たり前」という空気の職場は珍しくありません。

 外資系はドライだから残業はないだろうと思う人はいるでしょうが、一概に言えません。わたしが知っている大学の先生は、外資系のコンサルタント会社から転職しました。このコンサルに務めた3年間、月の労働時間が400時間くらいだったそうです。400時間と言えば25日、1日16時間働いたことになります。ドン・キホーテよりもすごい働きぶりです。この働き方は2つ目のパターンで、納期に間に合わせるのに働かざるを得なかったということです。この人は、そんな生き方に疑問を持って会社を辞めたそうです。

 残業を減らそうという動きは、最近目立っています。夜8時になると、ビルの電気が消えてしまうとか、朝早く来て仕事をすると朝食が出たり残業代より手厚い手当てが出たりするなど、企業も真剣に考え始めています。

 女性が働きやすい会社を目指すなら、「残業は当たり前」などもってのほかです。志望する会社の残業については、先輩から話を聞いたり、夜会社から出てくる人や会社の窓の明かりなどを見ていたりすれば、分かるでしょう。

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