2016年01月05日

ITが世界を変える、報道も変わる… 担うのは「スマホ世代」

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 難民の境遇を体験したり、大統領選の討論会に疑似参加したり、スマホによるバーチャルリアリティー(VR)でニュースの現場を体験する試みが米国で始まっています。ITやスマホの進化がさまざまな業界にもたらす変化を報じる記事が目立ちます。あらゆる分野でITを活用した大変革が加速しているからでしょう。このIT時代を切り開くのは、「スマホネイティブ」と呼ばれるみなさんの世代です。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「報道にバーチャルリアリティー/米メディア、次々進出/スマホ装着 目の前に『難民キャンプ』」です。
 記事の内容は――米メディアが相次いでVRを使ってニュースを報じる試みに乗り出している。テクノロジーの進化や端末の値下がりで手軽に体験できるようになったことが大きい。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は昨年11月、日曜版の定期購読者約100万人に対し、頭に着けて手軽にVRを体験できる段ボール製の「カードボード・ビューアー」を配り、難民の子どもたちの境遇を追ったVR向けドキュメンタリーも公開した。専用アプリを起動したスマホをビューアーに入れヘッドホンも使うと、まるで難民キャンプにいるかのように子どもの姿が目の前に現れる。360度を同時に撮影するカメラを複数使って撮影した。NYTが進めるデジタル分野強化策の一環で、NYTマガジン編集長は「普通は行けない場所に読者を連れて行くことができる」と話す。経済紙ウォールストリート・ジャーナルや通信社APもVRを使った報道を始めた。APの担当者は「北朝鮮やキューバなど、ユーザーに現地を『経験』してもらうことも一つの案だ」と話す。米テレビ業界もVRへの進出を始め、米大統領選に向けた民主党の候補者討論会で視聴者が舞台に立っているかのように感じられるVR映像が配信された。VRの実用化で先行しているのはゲームの分野で、ソニーは頭に装着する形の端末を発表している。将来的には教育など他の分野への応用も広がりそうだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
(写真は、ニューヨークのイベントでAPなどが手がけたバーチャルリアリティーのドキュメンタリーを見る人たち)

就活アドバイス

 NYTのサイトで、難民やパリ同時多発テロ後に現地で撮った360度のVR映像を見ることができます。「nytvr」でネット検索してみてください。ビューアーが手元にないので、VRの臨場感は味わえませんが、どんな映像かはわかります。現場の音声がそのまま流れるだけなので、ニュースというよりはドキュメンタリー映像で現場を体感できる新たなメディアといったところでしょうか。きっと日本でも同じような試みが始まるでしょう。

 新たな報道手法では、昨年12月に朝日新聞がフェイスブック(FB)を使った実験をしました。米マイクロソフト創業者で社会貢献活動家のビル・ゲイツ氏を招いた対話集会でのゲイツ氏への質問をFBで公募。社会貢献という硬いテーマにもかかわらず、インタビュー動画は15万回以上再生されました。FBのライブ動画機能を使った現場からの生中継配信も行い、自撮り棒につけたスマホで記者が自ら語り現場の様子を撮影したところ、「時代は進んでいる」「繫がり感ハンパないw」といったコメントがリアルタイムで寄せられました(下記リンクから見ることができます)。日本のメディアでは初の試みでしたが、新聞記者が現場からライブ中継をするのも、近い将来、当たり前になるかもしれません。

 新聞各紙を見ていると、新年になってとくにスマホやAI(人工知能)などIT関連の記事が目立ちます。年の初めは新たな試みを紹介する記事が多いこともありますが、技術が加速度的に進化しているからだと思います。1月3日の朝日新聞の1面には、連載記事「18歳をあるく/スマホ世代が塗りかえる」が載りました。若者を中心とした元気なベンチャー企業を紹介した記事ですが、ITはあらゆる業界を変えていく可能性があります。その中心を担うのは、高校生のころからスマホが当たり前だったみなさん「スマホネイティブ世代」です。志望する業界がこれからITによってどう変わっていくのか、最新ニュースに注目するのはもちろん、新たな展開に考えを巡らせておくときっと役に立ちますよ。

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