2015年12月09日

「イクボス」が多い会社は働きやすい?

テーマ:社会

ニュースのポイント

 「イクボス」って知っていますか? 「あきのエンジェルルーム」では何度か取り上げていますが、部下のワーク・ライフ・バランスを支援しながら組織として業績を上げ、自らも実践する上司(経営者・管理職)のこと。育児に積極的に取り組むパパ「イクメン」の上司版です。みなさんは就活で会社は選べますが、入社後の上司は自分では決められません。ただ、イクボスが多い会社は、男性も女性も働きやすい可能性大です。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(10面)の「広がるイクボス同盟/1周年 39社に/仕事・育児両立へ『宣言』」です。
 記事の内容は――イクボスを増やす企業の取り組み「イクボス企業同盟」が発足から1周年を迎えた。イクボスは、育児や地域活動なども大切にしながら効率的に働いて成果を上げる上司像。「イクメン」を広めたNPO法人ファザーリング・ジャパンが新たに打ち出した。日本企業に特有の長時間労働のため、平日に家事や育児をできない父親は多く、上司の意識改革が必要と考え、大手11社と立ち上げた。女性の活躍やダイバーシティー(人材の多様性)に取り組む企業が加わり1年で39社に。経営者が社内外に「イクボス宣言」をして社員の意識改革を促し、担当者同士はノウハウを交換。1社の男性育休の取り組みを他社が相次ぎ導入するなど効果が出ている。地方自治体でも、三重や広島など16県の知事、北九州や千葉の市長らも「イクボス宣言」をした。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 大学などで「仕事の選び方」といったテーマで講義をするとき、「他者への影響力」「社会的評価」「報酬と豊かな生活」「個性の発揮」などの15項目から、自分が大切にしたい「仕事選びの軸」を三つ選んでもらうワークをすることがあります。昨日もさいたま市での就活セミナーで学生たちにやってもらったのですが、多くの学生が選んでいたのが「プライベートな時間」という選択肢でした。各地の講演後に学生から受ける質問でも「きちんと休みが取れるかどうかはどうしたらわかりますか?」とか、「新聞記者に興味があるんですが、ちゃんと休めますか?」といった内容がかつてより増えたように感じます。

 プライベートな時間はとても大切です。今日の1面や社会面には、ワタミグループの居酒屋「和民」で起きた当時26歳の女性社員の過労自殺をめぐる訴訟で、創業者で当時代表取締役だった渡辺美樹参院議員が謝罪し、1億3000万円超を支払うことで和解した記事が載っています。「24時間、死ぬまで働け」と唱えていたワタミの働かせ方は論外ですが、日本には長時間残業や休日出勤が当たり前という会社が多くあります。本人がイクメンになりたくても、こうした旧態依然の考えの上司の下では難しいでしょう。

 上司の意識を変えないと社員の働き方は変わらない、として立ち上がったのがイクボス企業同盟です。イクボスが多い会社では、パパもママも働きやすいでしょうし、独身の社員だってプライベートを大切にしやすくなります。でも、それだけではないようです。

 同盟をつくった一人、三井物産ロジスティクス・パートナーズ社長の川島高之さんは、今年1月の朝日新聞のインタビューでイクボスについてこう語っています。「単なる子育て支援ではありません。仕事オンリーの10人より、子育てや市民活動などのバックグラウンドをもつ人もいる10人のほうが、より成果を出せるし危機にも強い。多様な社員のマネジメントは、企業が競争力をもち続けるための戦略そのものです」「長男が生まれ、子育てや地域活動など会社以外の経験や人脈を得て、コミュニケーションの幅が広がり、より広い視野を持てるようにもなりました。ライフに時間を使うほど、仕事の能力が高まったことを実感したからです」
 日本の企業の働き方を変えて、競争力も高めようという壮大なプロジェクトなんです。

 では、イクボス同盟に加盟している会社にはイクボスが多いのか、というと必ずしもそうではありません。ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティーへの取り組みは、各社さまざまなレベルにあります。ただ、イクボスを増やそうという姿勢であることは間違いありません。実は朝日新聞社も今月、イクボス企業同盟に加盟しました。正直なところ、今はまだイクボスが多いとは言えませんが、これから増やしていこうという宣言です。

 こうした情報も会社選びのヒントにはなりますよ。イクボス同盟については、あきのエンジェルルーム「イクボスにあらずんば、上司にあらず!? さよなら昭和な管理職 の巻 ♡vol.15」「イクボス界の『サムライ・ブルー』に! これが“伝説のイレブン”だ ♡vol.16」で詳しく書いています。「男子禁制」をうたっていますが、男子諸君も読んでみてください。

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