2015年08月06日

「ANAがスカイマーク支援」で知る国内外の航空地図

テーマ:経済

ニュースのポイント

 国内3位の航空会社スカイマークの経営再建を、ANAホールディングス(HD)が中心となって行うことが決まりました。ANA、日本航空(JAL)の大手2社に対抗する「第三極」をめざしてきたスカイマークですが、今後2強体制が強まりそうで、日本の航空業界の転換点との見方もあります。これを機に日本や世界のエアラインの業界地図についても学んでおきしょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面の「ANA、スカイマーク支援・再生計画認可/債権者の8割賛成」です。
 記事の内容は――経営破綻(はたん)したスカイマークの民事再生について東京地裁は5日、ANAHDなどの支援を受ける再生計画を認可した。スカイマークの債権者集会で、ANA案が出席債権者の約8割の賛成を得た。国内でエア・ドゥなどの支援に携わった実績、計画が具体的なことが評価された。出資は計180億円で、投資ファンド・インテグラル、ANA、日本政策投資銀行と三井住友銀行のファンドが出す。ANAは共同運航によるスカイマーク便の座席販売、燃料の共同購入、機体整備の支援もする。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 スカイマークの再建策がまとまるまでには、昨年から紆余曲折(うよきょくせつ)がありました。破綻前にはJALとの業務提携交渉をしていましたが、2010年に経営破綻して税金などの優遇措置を受けているJALによる出資はまかりならんと国土交通省が待ったをかけ、ANAが乗り出しました。今年4月に再建策の骨格が固まりましたが、7月になって世界最大手のアメリカのデルタ航空を含む支援策も出され、債権者集会で二つの支援策が採択され、ようやく決着したわけです。

 スカイマークは、大手航空会社が独占していた業界に競争を促す航空自由化政策を受けて、1998年に運航を開始。ANA、JALとは別の「第三極」として航空市場に料金競争を持ち込みました。その後、数社が誕生しましたが、いずれもうまくいかずに次々とANAの傘下に。独立系を守ってきたスカイマークも今回、ANAの支援を受けることになりました。ANAHDの長嶺豊之取締役は記者会見で「我々はスカイマークの独立性を担保するための株主間契約を結び、独立性を維持する仕組みもある。運賃、便数、路線などの具体的な計画にANAは一切関与しない」と述べましたが、純粋な意味での第三極は姿を消すことになりました。
 
 「ドル箱路線」羽田空港の発着枠のシェアを見てみましょう。
①JAL 40%
②ANAHDが出資する航空会社 計60%
 ②の内訳は、全日本空輸(ANA)37%、スカイネットアジア航空5%、エア・ドゥ5%、スターフライヤー5%+スカイマーク8%です。ANA、JALの2強体制に集約されたことがよくわかります。

 日本の航空業界の歴史、スカイマーク破綻の経緯や再建策の背景については、「スカイマーク破綻でANA、JAL2強時代へ」(1月29日の今日の朝刊)、「スカイマーク再建 ANAとJALつばぜり合いの理由は?」(5月8日の業界トピックス)でも詳しく書いています。

 日本のエアラインの勢力争いに米デルタ航空が参戦したのはなぜか。世界の航空連合の構図も整理しておきます。
【スターアライアンス】米ユナイテッド航空、ANA、ルフトハンザドイツ航空など
【ワンワールド】米アメリカン航空、JAL、英ブリティッシュ・エアウェイズなど
【スカイチーム】デルタ、エールフランス、大韓航空など

 スカイチームには日本の航空会社が入っていません。デルタがスカイマーク支援に加わりたかった理由がよくわかりますね。

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