2015年07月22日

東芝不正会計で考える「コーポレートガバナンス」って?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東芝の不正会計問題は、歴代3人の社長(社長、副社長、相談役)が辞任するという異例の事態になりました。この問題で度々登場するのが、「コーポレートガバナンス(企業統治)」という言葉です。学生のみなさんはあまりなじみがないでしょうが、今の日本の経済界ではよく使われるキーワードの一つです。知っておいて損はありませんよ。(編集長・木之本敬介)(写真は、記者会見する東芝の田中久雄社長)

 今日取り上げるのは、オピニオン面(16面)の「社説・東芝不正会計/実行ある企業統治を」です。
 記事の内容は――名門企業の東芝で起きた不正会計は、投資家と経済システムへの背信行為であり、社外取締役を増やすなど企業統治の形を整えただけでは不正は防げないという教訓を示した。東芝は経営陣を刷新するが、会社全体の文化や風土を作り直すことが急務だ。東芝はいち早く委員会設置会社に移行し、企業統治のお手本の一つとされてきた。経営の根幹と言える事項に社外取締役が関与する仕組みで、①監査②指名(取締役の候補者を選ぶ)③報酬(経営陣の報酬を決める)の三つの委員会を取締役会に設けている。不祥事を受けて、東芝は社外取締役を増やして仕組みを強化する考えだ。しかし社外取締役には「財務に十分知見を有する者がいなかった」と指摘されており、数だけ増やしても不信はぬぐえない。安倍政権は企業統治の強化に熱心で「企業の稼ぐ力の強化」を狙いに掲げるが、まずは不正の防止を徹底するべきではないか。企業統治にかかわる制度全体の点検を急ぎたい。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 昨日に続き東芝の不正会計問題を取り上げます。今日の朝日新聞朝刊の東芝関連の記事で、2人の大臣が「コーポレートガバナンス」という言葉を使っています。
 「本当の意味でのコーポレートガバナンスをやっておかないと、日本のマーケットや東京証券取引所の信頼性を失いかねない」(麻生太郎財務相・金融相)
 「(成長戦略の策定に)携わった企業でコーポレートガバナンスを疑われる事案が生じたことは極めて遺憾だ」(甘利明経済再生相)

 コーポレートガバナンスは、株主を中心とした企業の利害関係者(ステークホルダー)が経営を監督することで、経営者の暴走などに歯止めをかけて不正行為を防ぎ、収益力を上げて企業価値を高めるための仕組みのことです。取締役監査役に社外の経営者や有識者を加える例が多く、「企業統治」と訳されます。2001年にアメリカのエネルギー会社による巨額粉飾決算「エンロン事件」を機に議論が始まり、日本でも会社法などをつくって整備してきました。

 今年は「企業統治元年」と呼ばれています。社外取締役を選ぶよう促す改正会社法が5月に施行され、6月からは東京証券取引所と金融庁がつくった「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の運用も始まりました。指針は、企業から独立した立場の社外取締役を2人以上選ぶことなどを求める内容です。今では東証1部上場企業の9割が社外取締役を選任しています。

 しかし今回の東芝の不正会計は、形を整えただけでは機能しないことを証明しました。東芝は2003年に米国流の「委員会設置会社」が解禁されると、日立製作所やソニーとともに真っ先に導入。企業統治の「優等生」と言われてきましたが、せっかくの仕組みを骨抜きにしていたわけです。免震ゴムのデータを偽装していた東洋ゴム工業も、社外の調査チームに「経営陣が企業統治の仕組みを適正に活用できなかった」と指摘されました。

 東芝の田中社長は21日の記者会見で「140年の歴史の中でも最大のブランドイメージの毀損(きそん)」と言いましたが、影響は東芝だけにとどまりません。東芝は安倍政権が旗を振る「企業統治改革」で先頭集団にいるとみられてきただけに、日本企業全体に疑いの目が向けられかねません。多くの企業の経営のあり方に問題を投げかけたとも言えます。いま日本の経済界では最大の話題ですから、「コーポレートガバナンス」「企業統治」という言葉くらいは知っておかないと、どこで話題に出るかわかりませんよ。

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