2015年06月26日

就活後ろ倒しで「むしろ長期化」 夏に備えよう (一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:就活

ニュースのポイント

 就活の期間が今年から変更されました。これまで会社説明会は、大学3年の12月からだったのを大学3年の3月からに、選考は4年の4月からだったのを4年の8月からにするよう、政府は企業と大学に求めました。大学3年の時に就活に振り回されて、学業がおろそかになるとか留学しにくいといった理由からでした。この就活時期うしろ倒しの実態を文部科学省が調べたところ、大学・短大の6割近くが「就活が長期化している」と答えました。政府の狙いははずれたのでしょうか。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)

 今日取り上げるのは、社会面(37面)の「58%『むしろ長期化』/今年から遅らせた就活/大学・短大回答」です。
 記事の内容は――今年から就職活動の開始時期が繰り下げられたのに、6割近い大学や短大が「就活が長期化した」と感じている――。文部科学省は25日、就活時期の変更について調査した結果を発表した。半数が、学業への支障が増えそうだと回答していた。調査は、国公私立の62大学と20短大を対象に、5月1日現在の状況を尋ねた。就活時期が前年度より「長期化している」と答えた大学と短大は58.5%。一方、「短期化」は17.1%だった。また、日程変更で、授業に出席できなかったり、卒論を仕上げる時間が減ったりするなど、学業について「支障が増えそう」「(新たに)生じそう」は計50.0%。「減りそう」は3.7%だった。職業体験として大学3年の夏におこなわれることが多いインターンシップが就活のスタートとなっているのが現状。調査は3887人の大学4年生らにも就活などについて尋ねた。インターンシップに対しては、学生の30.7%が「採用選考になっていると感じた」と回答した。入社の意思を聞かれたり、選考の一部と言われたりする例があったという。開始が変わらないのに選考時期などが遅くなったことで、長期化と感じられたとみられている。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 就活が「かえって長期化した」という話はよく聞きます。3年の夏休みにおこなうインターンシップが実質的なスタートになっている実態は変わらないのに、ゴールである内々定の時期だけが後ろにずれたので、「長くなった」と感じるのも無理のないところです。私が非常勤講師で教えている大学でも、3年生は夏休みのインターンシップの情報収集や申し込みに一生懸命になっていて、4年生は先輩訪問などに精を出しています。しかも4年生の本番は8月、9月になるのですから就活は1年余りの長丁場になっています。
 
 わたしが大学時代にやっていたアイスホッケー部の後輩は、8月の合宿場所を変えることになった、と言います。わたしたちが4年生の時以来37年間も続いてきた北海道の釧路での合宿を今年はやめて東京周辺にするそうです。4年生が就活のために企業回りをするのに釧路ではほぼ不可能だからです。釧路はアイスホッケーの本場で、夏にレベルの高い場所でみっちり練習することでチーム力をあげて秋のリーグ戦に臨むというのがこれまでのスケジュールでした。それが就活時期のうしろ倒しのために崩れてしまいました。去年までのほうが良かったと後輩たちは言います。

 政府の狙いはよく分かります。確かに最も勉強に打ち込める時期のはずの3年生が、就活のことばかり考えて走り回っているというのは、もったいないことです。そのために留学をあきらめるなどというのも、もったいないことです。ただ、そうした問題は、経団連加盟企業に後ろ倒しを約束させれば解決する問題ではなかったようです。企業のすべてが経団連に入っているわけではありません。加盟していない企業は、早くから採用活動をしています。それに、加盟企業だって、インターンは禁止されるものではありませんので、これまで以上にインターンに力を入れて、事実上、採用活動の一環と位置づけています。実際には、加盟企業でもすでに「内々定」を出しているところもあります。結局、誰も得をしない結果になっているということではないでしょうか。ひょっとすると、そう遠くないうちに元に戻るなんてこともあるかもしれません。
 
 ただ、就活生は決められたスケジュールに対応して動くしかありません。とはいっても、4年生が全力疾走しなければならないのはあと2カ月ほどです。3年生は夏が一番大切な時期だということを頭に入れて、それ以外の時期は少し緊張を和らげて過ごすのがいいと思います。

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