2015年05月19日

個性で勝負!マツダみたいな会社、各業界で探そう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 トヨタ自動車とマツダが環境・安全技術を中心に業務提携することで合意しました。個性的な車づくりで知られるマツダのファンからは、生産台数世界一のトヨタにのみこまれないかと心配する声もあがっています。マツダは、世界一や日本一でなくても個性が際立つ会社の一つです。個性的な企業は各業界にあります。会社の個性を見極めましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「トヨタとの提携強化/マツダ公式FBに心配の声/『らしさ、なくさないで』」です。
 記事の内容は――トヨタとの業務提携強化を発表したマツダの交流サイトの公式ページに、賛否の声が殺到している。発表した13日夜から18日夕までにフェイスブック(FB)に寄せられたコメントは529件と、トヨタに寄せられた数の23倍。「10%の熱狂的なファンのためのクルマを作り続けて」「悪い意味でトヨタっぽくならないことを祈る」などが多い。最大手トヨタに「のみこまれる」ことを心配する声が目立っている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 トヨタとマツダの提携は、トヨタが水素を燃料とする燃料電池車(FCV)の技術を、マツダが低燃費のディーゼルエンジンを相互に提供することなどが有力です。トヨタは世界に先駆けて燃料電池車「ミライ」を発売しましたが、高級車並みの価格や水素ステーションの整備が課題。マツダとの協力で量産が進めば、コスト削減や水素ステーション整備の進展が期待できます。マツダは、アメリカのフォードと密接だった関係が弱まっており、新たな「後ろ盾」を必要としていました。

 背景には世界で環境規制などが強化される一方、エコカーといっても、日本ではハイブリッド車(HV)、欧州ではディーゼル車、米カリフォルニア州では電気自動車(EV)、新興国では従来型エンジンを改良した低燃費車など、地域で売れ筋が異なるという事情があります。技術が多様化し、世界最大手のトヨタでも「1社ですべてをまかなうのは不可能」(幹部)といい、開発費をどう節約するかは切実な課題です。国内外の自動車メーカーの提携関係は図のとおり。自動車業界志望者は整理しておいてください。

 そんな中での提携ですが、マツダファンから、「巨人」トヨタとの関係に懸念の声があがったわけです。私が1986年に就職して初めて買った車は、マツダのベストセラー車「ファミリア」の中古車でした。当時はやりだった3ドアハッチバックという形式で、とてもよく走るお気に入りの車でした。マツダといえば、世界で初めてロータリーエンジンの量産に成功したり、スポーツカーに強く自動車耐久レース最高峰のフランス「ルマン」で総合優勝したり、個性的な車で人気を得てきました。最近も、独自の低燃費技術スカイアクティブを開発したり、低燃費のクリーンディーゼルを売りにしたCX-5やデミオが日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したりと、他社とは違う路線でたびたび話題になっています。提携を心配する声は、そんなマツダの個性を愛する熱いファンが一定数いる証拠ですね。マツダが筆頭株主のプロ野球・広島カープと少し似ていませんか。

 マツダは、2014年度の生産台数137万5064台、2015年度3月期の売上高3兆338億円、営業利益2028億円で、いずれも過去最高を記録しました。ただ、トヨタはそれぞれ894万8444台、27兆2345億円、2兆7505億円。文字どおり桁違いです。日本の自動車大手8社中、売上高ではマツダが4位ですが、トヨタ、ホンダ、日産自動車とは大差がついています。

 マツダの小飼雅道(こがい・まさみち)社長は昨夏の朝日新聞のインタビューに「台数を求めるのではなく、小規模ながら一定の支持を得るブランドをめざすのが基本の方針」と語り、大手との資本提携は否定しました。開発拠点が広島県に集中していて、各部門が一体で開発を進められることがマツダの強みだともいいます。従業員2万1000人の大企業ではありますが、さらに上位の企業に比べればこぢんまりしているだけに、独自路線で根強いファンを獲得していくことに活路を見いだしているのです。

 みなさんが志望するそれぞれの業界に、トップクラスではなくても、個性的で独自路線を歩む会社があるはずです。それぞれの企業の個性を見極めて、自分に合う会社を探してください。

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