2015年04月03日

デフレ時に強い企業、インフレ時に強い企業を知ろう(一色清の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:経済

お知らせ

 今週から金曜日の「今日の朝刊」は、朝日新聞教育コーディネーターでテレビ朝日「グッド!モーニング」金曜コメンテーターも勤める一色清が担当します。ニュースの最前線から就活生に役立つ情報をピックアップ。週末にじっくり呼んで下さい。

ニュースのポイント

 貧乏学生の救世主と言えば、牛丼。「うまい、やすい、はやい」というキャッチコピーもありますが、まさにその通りです。ただこの中の「安い」が少し揺らぎ始めています。牛丼チェーン店の大手3社であるすき家、吉野家、松屋が、最近の牛肉価格や人件費の高騰などで値上げに踏み切りつつあります。最後まで並盛200円台でがんばっていたすき家も350円への値上げを発表しました。200円台まで安くなった牛丼は、物価が下がるデフレ時代の象徴でした。3社は業績でもその時代の勝ち組でしたが、デフレ脱却を目指す時代になり、苦しんでいます。世の中にはデフレに強い企業と物価が上がるインフレに強い企業があるのです。

 今日取り上げるのは、経済面(10面)「すき家291円→350円/牛丼並盛り 値上げ相次ぐ」です。
 記事の内容は――牛丼チェーン「すき家」は、現在291円の牛丼並盛りを、15日から350円(税込み)に値上げする。並盛りなどは、値上げと同時に肉、タマネギの量は2割増やす。値上げ幅は、ミニからメガまで各サイズで40~60円ほど。値上げの主な理由は、新興国での需要増などで輸入牛肉の値段が高くなっていることだ。すき家は、昨年8月にも並盛りを21円値上げしたが、このときは深夜帯の1人営業(ワンオペ)の解消を進め、人件費が増えることへの対応だった。牛肉価格の高騰による値上げは、他社にも広がっている。松屋は昨年7月、関東に限って牛肉の品質を高めた「プレミアム牛めし」に切り替え、並盛りは従来の「牛めし」より90円高い380円とした。吉野家も昨年12月、並盛りを80円上げて380円にした。牛丼大手3社の並盛りは、昨年4月の消費増税までは200円台だったが、すべて300円台になる。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 物価が下がるデフレになると、業績が伸びる企業があります。この牛丼3社のほかにもハンバーガーのマクドナルドや、衣料品のファーストリテイリングなどです。業態でいうと、ディスカウントショップやスーパー銭湯、軽自動車メーカーや焼酎メーカーなどは、どちらかというとデフレに強いと見られます。
 デフレ時は給料も上がりませんので、消費者は価格に敏感になります。価格を見て商品を選ぶ態度を「価格選好」といいますが、この価格選好が強まるわけです。そういうときに消費者に支持されるのは「お得感」のある商品やサービスを提供できるところです。「えっ、こんなに安くていいの」と消費者が感じれば、しめたものです。もちろん、そのためにはコストを徹底的に絞る努力や安い目玉商品では損を出しても脇役商品でもうける戦略が必要になります。そうしたことのできる企業がデフレに強い企業です。

 一方、インフレ時に強いのは、高級品を作ったり売ったりする企業や土地や株をたくさん持っている企業です。インフレになると、お金の価値が下がりますから「価格選好」の意識が薄くなります。かわりにモノの価値が上がりますので、「少々高くてもほしいものは早く買おう」という心理になります。ですから、百貨店や輸入車販売会社の業績は良くなります。また、インフレになるということはお金がジャブジャブと余っている状態ですから、土地や株の値段が物価以上に上がることが一般的です。となると、不動産業界や証券会社だけでなく、土地や株をたくさん持っている歴史の古い会社や金融機関も余裕が生まれます。

 今は、デフレ脱却を目指して政府や日銀が懸命になっているところです。軽いインフレにして消費者にお金を使わせることが狙いです。ただ、笛吹けど踊らずといったところもあり、これからインフレに向かうのか、デフレに逆戻りするのか、見通せません。現時点ではデフレ時に強い企業がいいよともインフレ時に強い企業にしなさいともいえませんが、志望する企業がどちらのタイプなのかを考えることは、企業の体質や役割を知る上で役に立つと思います。

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