言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2014年10月29日

厚化粧はよくないね~敬語の話その2

 前回は敬語を使う際、「尊敬語」と「謙譲語」を混同しないように、という話をしました。今回は「過剰敬語」についてお話しします。

 最近、学生のみなさんやファミレスの店員さんと話していると、過剰な敬語が多用されているように感じます。身に覚え、ありませんか。

 代表格が「二重敬語」。尊敬語のマシマシです(笑)。古典文法では「より高い敬意を表す」ために使われていましたが、現在の口語文法では適切ではないとされています。まさに「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」ですね。

 ☆先生、私の論文をご覧になられましたか?

 こんな言葉の使い方、している人はいませんか? 「ご~なる」だけで尊敬語。そこに尊敬の助動詞「れる」がついている二重敬語。ここは「ご覧になりましたか」で十分。

 ☆部長はたった今お帰りになられました

 これも「お~なる」で尊敬語。そちらを生かすなら「お帰りになりました」。尊敬の助動詞を生かすなら「帰られました」。どちらかにしましょう。

 「おっしゃられる」「おいでになられる」なども同様。「おっしゃる/言われる」か「おいでになる/来られる」でOK。

 以前話した「ら抜き言葉」ほどメジャーではありませんが、おかしな敬語に「さ入れ言葉」というものがあります。

 ☆先生の論文を、読まさせていただきました
 
 第1回の「させていただく」が登場。まあこれは使ってもよい場面でしょう。
 しかし「~させてもらう」の謙譲語「~せていただく」に「さ」が入ったのは良くない。使役の助動詞「せる/させる」は動詞によって使い分けがあります。五段活用の動詞とサ変動詞「する」の未然形には「せる」、それ以外は「させる」がつきます。
 「読む」は五段活用なので、未然形につくのは「せる」。誤って「させる」を使ったため、「さ」が入った「さ入れ言葉」になってしまいました。

 敬語をうまく使いこなすのはなかなか難しいと思います。特に誤った表現に慣れてしまっていると、つい口頭でも文字でも使ってしまいがち。それを改めるために、前回と今回のコラムが、「気づき」の助けになれば幸いです。

今週のおまけ ~敬語が印象的な歌詞といえば?~

 毎度おなじみ、読者の皆さんに大好評!(ナカハラ調べ)
 歌詞紹介タイム!

 敬語のあるJ-popやロックってなかなか思いつかない。
 やはり「目の前の身近なあなた」に歌う歌が多いからでしょうか。
 (そもそも、丁寧語の「ですます」調の歌も少ないですよね)
 ましてやタイトルにはなかなか……。

 そんな中で見つけたのがこれ。
 キャンディーズ「暑中お見舞い申し上げます」

 ♪なぜかパラソルにつかまり
 ♪あなたの街まで飛べそうです
 ♪今年の夏は 胸まで熱い
 ♪不思議な 不思議な夏です
 ♪暑中お見舞い申し上げます

 「言う」の謙譲語「申し上げます」も印象的ですが、「です/ます」の繰り返しが心地よいです。
 ちなみにこの曲、1977年のリリース。筆者は5歳でした(笑)。
 後にハロープロジェクトのグループ、℃-ute(キュート)がカバーしています。これがオリジナルへの敬意を感じさせるフレッシュな歌唱で、非常に良いカバーとなっています。