あきのエンジェルルーム 略歴

2015年07月09日

まだ一社も内定がない人へ… 自分を勇気づける方法 ♡Vol.43

 いつも心にエンジェルを。

 今週の月曜、7月6日は「サラダ記念日」でした。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 (『サラダ記念日』より)

 1987年、歌人の俵万智さんが出版した第一歌集を代表する短歌です。新しい感覚の作品が話題になり、歌集として異例の260万部を超えるベストセラーになりました。
 実はこの記念日にちなみ、毎年この季節にサラダをテーマにした短歌が一般募集されています(読売新聞主催/キューピー協賛)。10回目ということもあって今年の「サラダ記念日・短歌(うた)くらべ」には過去最多の応募総数9006首が集まりました。その中で、私がみなさんに紹介したいな、と思ったのが優秀賞10首のなかの1首です。

水曜の昼にセブンのコブサラダさよなら御社負けるなあたし 唐田佳奈さん(福岡県)
 就活中の女子学生の歌でしょうか。「さよなら御社」というからには、思わしくない結果、「お祈りメール」が届いた直後かもしれません。セブンイレブンのコブサラダといえば、ボリュームがあって、お値段もそこそこしますよね。学生にとってはちょっとした贅沢なのかも……。「コブ」と「鼓舞」が掛け言葉になっている気もしますし、「負けるなあたし」としめくくっているところに、彼女の前向きになろうと懸命に努力する様子が伝わってきて、心から応援したくなりました。
 さて、後ろ倒しになって長期化したと言われる2016年春の就活戦線もまさにラストスパートの時期です。8月には経団連の指針を守っている大企業などの選考もスタートし、まだ一社も内定がない人はもちろん、すでに内定はあるけれど本命はこれから、という人にとっても正念場ですね。

 今回はまだ内定がない、ちょっと不安な気持ちの人を、最近注目されている心理学を使って応援したいと思います。2014年、ベストセラーになった『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)で一躍、日本でも知名度が上昇したオーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラー(1870~1937)による教えです。アドラー心理学の本は、書店の自己啓発系のコーナーに山積みになっていますので、みなさんも見かけたことがあるかもしれません。
 そもそも、アドラーはどんな人なのか。アドラーは「心理学の三大巨頭」の一人ですが、残りの二人、フロイトやユングに比べて日本での知名度は高くありませんでした。どうしてかというと、フロイトやユングの理論が心を病む人を対象に医療現場で応用され、注目されたのに対し、アドラーの対象は普通の人だったからです。
 つまり「心理的には健常だけれども、なんらかの要因によって問題行動を引き起こしたり、環境に適応できなくなったりした人」です。そういった「心の糸が切れかけた」あるいは「人間関係に疲れた」人を前向きにさせ、社会に適応できるよう導くことが、アドラー心理学の目的でした。
 アドラーは、自分のことが好きで(自己受容)、周りの人たちを仲間、味方と信頼し(他者信頼)、人の役に立つ喜び(貢献感)を感じることが、「幸せの条件」と考えていました。
 アドラーは子どものころからぜんそくや足の骨が変形するくる病にかかり、身長は成人しても154cmと小柄でした。一般的な身長で健康的な肉体をもつ兄に対する劣等感をばねに医師になり、アドラー心理学を生み出したのです。彼はこんな言葉を残しています。

すべての人は劣等感を持っています。
しかし、劣等感は病気ではありません。
むしろ、健康で正常な
努力と成長への刺激です。
 (『個人心理学講義――生きることの科学』より)
 いま読めば、当たり前のことですが、100年も前、コンプレックスやトラウマを心の病の要因とする考え方が主流の時代に、劣等感をポジティブにとらえる理論を提唱していた人がいたのです。

 アドラー心理学の基本理論の一つに「目的論」というものがあります。人間の行動には「原因」があるのではなく、「目的」がある、という考え方です。
 失敗や困難の「原因」(自分の過去や他人の言動)をさぐっても正しい答えはないし、どっちにしたって過去には戻れません。
 であれば、過去でなく、自分は最終的にどうしたいのか、という「目的」を最優先に、そして建設的に考える癖をつけよう、ということです。
 たとえば、前回の面接がうまくいかなかった(過去)から、やる気を失って(原因)、就活やめちゃった(結果)という人がいたとします。その場合、アドラーの考えはこうです。「あなたの目的は就活をやめること。そのために、面接がうまくいかなかった、という過去を利用した」です。ある意味、厳しい見方ですね。
 もし、自分の目的が納得できる就活をしたい、というものだったら、このラストスパートの時期にガス欠になるわけにはいきません。自分なりの方法で心と体のガソリンを補給しながら次に備えましょう。前出の女子学生にとってはそれが「コブサラダ」かもしれませんし、みなさんにとっては音楽を聴くことや、気の置けない友人とおしゃべりすることかもしれません。
 もう一つ、アドラーが大事にしているのが言葉です。「どうせ私なんて」というマイナスの言葉より、前出の短歌のように「負けるなあたし」のほうがモチベーションが上がりませんか? 「お先真っ暗」よりは「朝が来ない夜はない」とつぶやくほうが断然いい。こんな風に、心の中でつぶやく言葉、セルフトークを「マイナス」でなく「プラス」のものに意識的に切り替えてください。
 私もたくさんの失敗、恥ずかしくて消え入りたくなるような瞬間がいっぱいありました。そのときはいつも「命とられるわけじゃなし」と自分に言い聞かせて、立ち直ってきました。今思えば、これが私にとっての最強のセルフトークだったわけです。

 みなさんも自分なりの“効く”セルフトークを考えておき、マイナスの思いが心に広がってしまいそうになったときに意識して使ってください。でも、そんな言葉もむなしく聞こえるくらい落ち込むこともあるでしょう。
 そういうとき、アドラーの「勇気づけ」メソッドを試してみましょう。アドラーは「ここ一番」のピンチのとき、楽観主義でいられるかどうかが大切だと言っています。
 まず朝の巻です。
1:朝起きたら大きく伸びをし、「爽快だ」と声に出してみる
2:洗面所の鏡で自分にニッコリほほ笑みかけて、副交感神経を優位に導く
3:人に対する「おはよう」「ありがとう」の言葉をおろそかにしない


 次は夜の巻。
1:帰宅したらスイッチを切り替えて、安らげる時間をつくる
2:お風呂などで、その日あったイヤなことを泡と一緒に洗い流す
3:眠りにつく前、今日感謝したい事柄や人を思い浮かべて「ありがとう」を言う


 なんだそんなこと?と思うかもしれせん。だまされたと思ってやってみてください。最初から全部やろうと思わず、できることから始めてみるといいですよ。

 ついでに、いま話題のアドラー心理学を就活にもちゃっかり生かしている私、なんだかトレンドに敏感っぽくて、カッコよくない?と、プラスのセルフトークもしちゃいましょ。